不倫の慰謝料の相場はどれくらい?金額に影響を与えるものは?

不倫慰謝料の金額は、どのくらいの金額が相場になるのでしょうか?

法律上「慰謝料の金額を○○円にしなければならない」などといった明確なルールはありません。

ただ、裁判所が不倫慰謝料を算定するときの「相場」はあるので、請求された金額が妥当であるかについて判断する際の参考にすることは可能です。

この相場について、他の解説記事では「数十万円〜300万円」「50万円〜500万円」「100万円〜300万円」との記載をよく見かけます。

しかし、開設以来、一貫して不倫慰謝料をメインの分野として扱っている当事務所の相場観とは、若干異なるように感じています。


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相場は”離婚した(する)かどうか”で変わる

まず、不倫されたときの慰謝料相場は被害者夫婦が「離婚した(離婚する)かどうか」で大きく変わることが多いです。

既に離婚したか、または離婚することが確実であるなら、不倫・浮気された被害者の受ける精神的苦痛が大きくなるので、慰謝料は高額になります。

他方、離婚せず夫婦関係を修復するなら被害者の受ける精神的苦痛は相対的に小さいため、高額な慰謝料は認められません。

ただ、離婚しなくても別居を余儀なくされるなど「夫婦関係が実質的に破綻」した場合には、離婚する場合に準じて高額な慰謝料が認められることもあります。

離婚した(離婚する)場合の慰謝料相場

被害者夫婦が離婚した(離婚する)場合の慰謝料相場は、100~200万円程度です。

不貞期間が20年以上であって非常に長期であるとか、何度も不貞が発覚しているにもかかわらず懲りずに不貞を繰り返しているなど、特殊な事案で200万円を超えるケースもゼロではありません。

しかし、当事務所が担当した裁判においては、ここ数年の東京の裁判所の判断で200万円を超える金額になるケースは多くありません。

150万円という金額をベースに、個々の事案に応じて慰謝料額を150万円から変更すべきか検討する裁判官がそれなりに多いように感じます。

離婚しない場合の慰謝料相場

他方、被害者夫婦が夫婦関係を修復し離婚しない場合の慰謝料相場は、50~150万円程度です。

もちろん150万円を超えるケースもゼロではありませんが、ここ数年の当事務所が携わった東京の裁判所の判断の多くは、上記の幅に収まる判断を下しています。

ただ、裁判官の中には、離婚したか否かをそれほど重視せず、不倫慰謝料であれば基本的に150万円がベースになるとある意味硬直的に考えている裁判官もおります。
相手夫婦が離婚しないから必ず150万円未満の判断が得られるというほど単純なものでもありません。


慰謝料金額を決めるその他の事情

離婚裁判

インターネット上の様々な法律事務所様の記事を読むと、

「不貞期間や不貞回数・頻度、相手夫婦の婚姻期間、相手夫婦に子どもがいるか否か、不貞を積極的に働きかけたか否か、不貞した方の収入、不貞した方が反省・謝罪したか否かなど様々な事情を考慮したうえで不倫慰謝料額が定まる」

という記載を多く見かけます。

しかし、当事務所は非常に多くの不倫慰謝料裁判における裁判官を見てきましたが、上記のような事情があるか否かを一つ一つ確認し、その事情によって例えば10万円単位で金額を調整していくような裁判官は多くないという感覚を持っています。

不倫・不貞の悪質さ

まず、被害者夫婦が離婚した(離婚する)か否かを確認したうえ、その他、特に不貞が軽微といえるような特殊な事情はないか、特に不貞が悪質といえるような特殊な事情はないかを考慮する程度で慰謝料額を決めている裁判官が多いような気がします。

そのため、上記で列挙したような事情があるか否かを細かく検討し、ご自身の妥当な慰謝料額を算出すると、実際に裁判をしてみたら全く違う金額で判断が下るということもあると思いますので、細かな事情にあまり振り回されない方がよいと思います。

自分の相場額を持つ裁判官も

むしろ裁判官ごとに「自分の相場額」を持っているケースも比較的多く、上記列挙した事情の有無より、どの裁判官が担当になるかの方が重要なことも多く、担当裁判官が誰になるかの方がよほど慰謝料額に影響が生じるということすらあります。

なお、注意事項として、このページで述べた不倫慰謝料額の相場はあくまで東京(または東京近郊)の裁判所の相場です。

近年、不倫慰謝料額の相場は日に日に低額化しておりますが、この低額化の傾向はおそらく東京から地方に徐々に波及しているものと思われます。
地方の裁判所では上記相場より高額な慰謝料の判断が下るということが実際にありますので、ご注意ください。


自分たちで慰謝料を取り決める場合

不倫(不貞行為)の慰謝料請求

夫婦関係の問題上記でご紹介した相場は、裁判になったときに裁判所が不倫慰謝料を算定する場合のものです。

そのため、自分たちで話し合って慰謝料額を取り決めるときには、必ずしも上記の相場にこだわる必要はありません。

お互いが納得すれば、慰謝料をいくらにでも定められます。

不倫相手の資力も大きく影響

たとえば不倫相手の収入や資産が高い場合、500万円以上の慰謝料を払うケースもあります。

反対に、不倫相手の資力が低い場合には相場より低くなり、数十万円程度にしてもらえるケースも少なくありません。

不倫慰謝料について相手と話し合うときには「どこまで妥協できるか」という最低ラインをふまえて、粘り強く交渉しましょう。

仮に給料や資産が少ない場合には、現状をアピールして減額を求めてみてください。


肉体関係が証明されない場合

不倫慰謝料が認められるには、請求者が「肉体関係」を証明する必要があります。

肉体関係がなかったら「不貞」にならないので、慰謝料を請求できない可能性が高くなるからです。

不貞とは「結婚しているにもかかわらず夫や妻以外の人と性関係をもつこと」を表します。
肉体関係を証明できなかったら不貞ではないので、慰謝料が発生しにくくなるのです。

ただ、肉体関係がなくても社会の常識的な範疇を逸脱して親密な交際が行われると、「平穏な夫婦生活を送る権利を侵害した」として慰謝料が認められるケースもあります。

もっとも、その場合の慰謝料相場は不貞を行った場合より低く、50万円以下になるケースも多いです。


不倫慰謝料を請求されたときの対処方法

離婚相談を受ける弁護士

不倫慰謝料が認められるには、請求者が「肉体関係」を証明する必要があります。

肉体関係がなかったら「不貞」にならないので、慰謝料を請求できない可能性が高くなるからです。

突然、不倫慰謝料を支払うよう請求されたとき、自分では請求された金額が妥当かわからないことも多いでしょう。

相手の言い値で払ってしまったら、損をしてしまう可能性も十分にあります。

お早めに弁護士へ相談を

弁護士に依頼すると、弁護士が交渉などのやり取りを対応するため、相手と直接話す必要はありませんので、ご自身で相手とやり取りをすることが難しい方は弁護士への依頼を検討してみてください。

他方、交渉が得意で相手と話すことが苦でない方でも、弁護士でない方がこのページで記載した「裁判になった場合の相場額」を持ち出してもあまり説得力がありません。

慰謝料の交渉や裁判に強い弁護士へ

相手が納得してくれないケースも多いため、やはり実際に裁判に対応することが容易な弁護士に交渉を任せた方が、相場額に沿った解決を見込めることも多いと思います。

高額な不倫慰謝料の請求で悩んだときは、まずは不倫慰謝料の減額に強い弁護士に相談しましょう。

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